10.4.2 POPとIMAP

自分が直接操作しているコンピュータをローカルコンピュータと呼ぶことにしましょう. 届いたメールメッセージは,まずメールサーバにたまります.それをローカルコンピュータで動いているメールクライアントで読むためには,サーバにアクセスして,メールメッセージの情報をもってきてあげる必要があります.

メールサーバに届いたメールメッセージをメールクライアントで読むときの通信の方法として,POP方式と呼ばれるものと,IMAP方式と呼ばれる方法があります.これらを,メール受信プロトコルと呼ぶことにしましょう.プロトコルというのは,通信する際の規約のことです.

これらの方式で読むためには,サーバ側も,クライアント側もそのプロトコルに対応している必要があります. POP方式のほうが従来からある方式のために,メールサーバも,メールクライアントも対応している割合が高いです.IMAPは,最近普及した方式で,POP方式で読む場合に比べて,いろいろ利点があります.

教育用計算機システムにおいては,IMAP方式もPOP方式も使えます.POPサーバを指定するときには,pop.ecc.u-tokyo.ac.jpを指定してください.IMAPサーバは,imap.ecc.u-tokyo.ac.jpになっています.

POP

POP方式は,メールクライアントが,メールサーバにアクセスしたときに,メールサーバから,届いたメールメッセージを一度にごそっとクライアント側(すなわち,ローカルコンピュータ側)に持ってくる方式です.クライアント側にメールメッセージを持ってきたときに,サーバ側にたまっていたメールメッセージは削除していくのが普通ですが,設定により,メールメッセージをメールサーバ側に残すこともできます.

すなわち,POP方式では,メールメッセージを読むときには,ローカルコンピュータにメッセージを保管して,それを読むということになります. しかし,たとえば,学校と自宅など,複数の場所からメールメッセージを読むと,その時々までにサーバにたまっていたメッセージがその時使ったコンピュータに取り込まれてしまい,メッセージがばらばらになってしまいます. 一つのコンピュータしか使ってなくても,いろいろなメールクライアントの種類を使い分けたい場合は, POP方式で読んでしまうと,メールメッセージがバラバラになるという問題が起こります. メールメッセージをサーバ側に残すという手で乗り切ろうとしても,サーバにメールメッセージがたくさんたまってくると,処理に時間がかかるようになります. またメッセージをサーバに残した場合は,同じメッセージを二度読むことになってしまいます.

そこで登場するのがIMAP方式です.

IMAP

IMAP方式は,メールクライアントで,メールサーバにたまったメールメッセージを読むときに,届いたメールメッセージをメールサーバからメールクライアントに全部持ってくることをせずに,メールサーバでメールメッセージを管理する方法です.

IMAP方式では,まず,メールクライアントは,メールサーバから,メールメッセージの中身をローカルコンピュータに全部持ってこずに,サブジェクトなどのヘッダ情報だけ,持ってきます.メールクライアントは,実際にメールメッセージの中身の情報が必要なときだけ,サーバからそのメールメッセージの中身をとってきます.

どのメッセージをすでに読んで,どのメッセージをまだ読んでないという,未読既読情報の管理も,サーバ側で行います.

メールメッセージがメールサーバに残るので,いろいろな場所からメールを読んでも,同じメッセージが読めるという利点があります. また,いろいろなメールクライアントで読んでも,メールメッセージがばらばらになる心配がありません.

メールメッセージをサーバ側にためていくので,サーバの容量が大きくない場合は,サーバのメールボックスがあふれてしまうという事態が起こります.しかし,サーバにあるメールメッセージをローカルのコンピュータに移動することもできます.その場合は,その移動したメールメッセージは,そのローカルなコンピュータ以外からは読めないということになります.

IMAP方式の弱点としては,サーバ側にメールメッセージが保管されるため,メールを読むのにネットワークを通してみなければならないということがあります.サーバとローカルコンピュータの間のネットワークが調子が悪いなどで,メールサーバに接続できないときは,今まですでに届いていた分のメールメッセージも基本的には読めなくなります.ただし,前回メールメッセージを読んだときの内容が,クライアント側にキャッシュとして残っている場合もあります.