21.2 電子メールと社会

電子メールは非常に便利なツールですが, その使い方によっては比較的簡単に迷惑行為を引き起こしてしまいます. 以下で具体的な迷惑行為について解説しますが, このような行為は受けることはあっても自分が行うことがあってはなりません.

チェーンメール

チェーンメールとは,不幸の手紙の電子メール版と考えてよいでしょう. 「このメッセージを10人の人に転送してください」といったものです. チェーンメールはたわいもない遊びのように思えるかもしれませんが, ちょっと考えてください. 電子メールの場合には比較的簡単にメッセージが送れてしまいます. もしも多くの人がチェーンメールをそのまま転送したらどんなことになるでしょうか.

10人に送られたメッセージが,受け取ったそれぞれの人によってまた10人に送られる,ということを繰り返せば,チェーンメールは簡単に世界中に広まります. そしてネットワーク資源を食い潰すことになります. 実際,何年たってもチェーンメールがネットワークを周り続けます.

なお,チェーンメールには, 「このメッセージを転送しなければ不幸になります」という形の古典的なものだけでなく, 「白血病の患者を救うために」「Rh- の献血をお願いします」など, 言葉巧みにメッセージの転送を誘うものもあります. しかし, それが事実であるのかあるいはデマであるのかを確かめることが難しいばかりでなく, 仮に事実であったとしてもそれをチェーンメールという形で広めることに関しては, 手段が間違っていると言えるでしょう.

チェーンメールが自分の元に届いたときにとる対応は「無視する」ことしかあり ません.

ネズミ講

ネズミ講というものをご存じでしょうか? 「最初に1000円を送れば,一ヶ月後には100万円になります」などと主張しているものはネズミ講である可能性が高いでしょう.

少し考えれば分かりますが,このシステムはすぐに破綻します. なぜなら,会員が無限に増えていくことはあり得ないからです. このような,破綻することが明らかなシステムであるネズミ講は, 法律では無限連鎖講と呼ばれ,明確に禁止されています. なお,「前の会員が抜けるから違法ではない」などと主張することもありますが, 仮にそうだとしても,会員が無限に増えることを仮定している場合は, ネズミ講に該当すると考えられています.

ネズミ講自体はコンピュータやインターネットとは何の関係もありませんが, 昨今,インターネットを利用したネズミ講が非常に多く行なわれています. 不特定多数にメールを配信して加入者を勧誘するという形をとるために, 従来のネズミ講よりも勧誘が行ないやすくなったということでしょうか. ネズミ講は破綻することが目に見えているだけでなく,そもそも違法です. 決して加入してはいけません.

なお,ここで金銭のやり取りだけでなく相応の価値をもった商品 (例えば健康食品) を売るという形態をとる場合があります. ある程度の会員を集めると代理店となり,商品を売る資格ができる, などといったものが多いと思われます. これもインターネット上でたまにみかけることがあります. これはネズミ講ではなく,いわゆるマルチ商法,あるいはマルチまがい商法などと呼ばれるものです. これ自体は違法ではありませんが, 特定商取引法において様々な規制がされています. 違法でなくても社会的に批判を受けているところが多いことも知っておくとよいでしょう.

スパムメール

迷惑メール,スパムメール,あるいは単にスパムと呼ばれるものは, 頼んでもいないのに勝手に届く広告メールです.

スパムメールは,メールアドレスのリストを用いて, あるいはランダムなメールアドレスに向けて, 業者などが送信しているものが多いと言われます.

スパムメールも,それ自体が全て違法というわけではありませんが, 多くのネットワーク資源を無駄遣いし, 受信者に対してはそれを受信させた上で読ませるという負担を強いているわけで, 社会問題になっています.

なお,日本においては特定商取引法の施行規則において,

を満たした時に限って, これらの広告メールの送信が許可されています. また別個に特定電子メール法とその施行規則においても同様の規制がなされています. もっとも海外からのスパムメールも多いですし, 必ずしもこれらの基準が守られているわけではありません.

スパムメールを完全に遮断することは不可能ですが, いくつかの対策もあります.

現在のところは,スパムメールを嫌う人は各自で防衛するしかないといえます.

メール爆弾

大量,あるいは巨大なメールメッセージを送りつけることによって, メールボックスを溢れさせてほかの人からのメールを受け取れなくするなど, コンピュータの運用を妨害する人もいます. このような攻撃を,メール爆弾,あるいはメールボムと呼びます.

一般的に有効な対策はなかなかないのですが, メールサーバの管理者と相談して防ぐことになるでしょう.

メール爆弾は,相手に迷惑をかけるだけでなく, メールサーバやネットワークなどに負荷をかけてシステムダウンさせることもある, 許されない行為です.

詐欺メール

スパムメールと同様に, 不特定多数に送りつけている場合が多いと思われる詐欺メールが, インターネット上に数多く存在します.

例えば,「アダルトサイト利用料と延滞金」と称して10万円を突然請求するような架空請求メールであるとか, 何らかの賞に当選したという知らせを装って手数料のようなものを詐取するメールであるとか,手口は様々です. 当然,身に覚えのないお金を支払う必要はありませんが, 気になる場合には消費者センターなどに相談するとよいでしょう. 当然これは詐欺にあたります.

また,メールなどで実在の銀行などを騙り, 悪意のある人によって作られたそっくりサイトに誘導した上でカード番号やパスワードなどを入力させるという, フィッシング詐欺という手口も問題となっています.

現在の電子メールでは差出人を詐称することは簡単にできるので, 信頼できる人から送られたメッセージのように見えても簡単に信用してはいけません. 怪しいなと思ったら, メッセージに書かれた URL にアクセスしたりせず, 信頼できる人に信頼できる方法で問い合わせるなどしましょう.

もちろん,技術的に可能だからといって,他人のメールアドレスを騙って人をだますメッセージを送るようなことをしてはいけません.

関連する法律