29.7 インターネットサービスプロバイダ

インターネットの普及に伴い,自宅でも,インターネットへの常時接続環境を持つ人が増えてきていると思います.

従来は,モデムを使ったダイアルアップ接続や, ISDNによる接続が多かったのですが, 近年では, ADSLや光ファイバ回線などのブロードバンドによる接続が一般的に なってきました.ブロードバンドとは,広い帯域という意味で,ダイアルアップ接続などより, データの伝送速度が速い回線のことです.ブロードバンドの普及により, 動画や音声などのデータ量が大きいマルチメディアデータもインターネットを通じてスムースにやり取りが できるようになりました.モデムを使ったダイアルアップ接続では,57 kbps 程度の スピードでした.bpsは,一秒間に何ビットデータが送れるかという伝送速度の単位です.ISDNでは,64 kbps でした.

インターネットサービスプロバイダ

インターネットサービスプロバイダ(単にプロバイダとも呼ばれます.)とは, ADSLなどを提供している業者のことを指します.ADSLなどを利用するには インターネットサービスプロバイダと契約する必要があります.インターネットへの接続だけではなくて, 同時にメールサーバなどを利用できる契約が一般的です.ウェブページなどを 開設できる契約もあります.

ADSL

ADSLは,接続時間に関わらず料金が一定である定額制が一般的です.これにより, 常にインターネットにつながっている常時接続が可能になります.

ADSLも,ダイアルアップ接続やISDN接続と同様に,既存の電話回線を利用した通信です. よって,光ファイバによる接続と比べると大規模な工事が必要ありません. ADSLは「Asymmetric Digital Subscriber Line」の略で、直訳すれば「非対称デジタル加入者線」となります.非対称というのは,上り方向の伝送速度と,下り方向の伝送速度が異なることを指します. 上り方向とは,自分のパソコンから,プロバイダの方向にデータを 送る方向(アップロード)で,下り方向はそれと逆方向(ダウンロード)の通信のことです.下りのほうが高速に通信できる ようになっています.普通の使い方では,下り方向の通信のほうがよく利用されるからです. たとえば,ウェブページの閲覧時には,自分のコンピュータから,これこれのウェブページを見せてくれと ウェブサーバに要求を送って,実際にウェブサーバから,データが自分のコンピュータに送られてくることに なりますが,要求するために必要な通信量よりも,送られてくる実際のウェブページの中身のほうが通信量が大きいという わけです.

契約形態によって,最高通信スピードが異なりますが,最近は,40Mbpsのサービスが 出てきています.ISDNに比べると,遥かに速いということになります.しかし,これは理論的なスピードであって,実際には住んでいる場所がNTTの電話局から遠くなると格段にスピードが落ちます.

家庭内LAN

家庭内にも複数のコンピュータを持っている場合には,ローカルエリアネットワーク(同義語:ローカルネットワーク)を構築することになるでしょう.ブロードバンドルータなどを用いて,家庭内LAN 環境を作ることができます.

通常インターネットサービスプロバイダからは,IPアドレスはひとつしか割り当てられないので,家庭で複数のコンピュータを使おうとすると,家庭内において別のネットワークを作り,それ上のコンピュータにプライベートIPアドレスを割り当てる必要があります.ブロードバンドルータを用いると,インターネット側のネットワーク(WAN)と,家庭内ネットワーク(LAN)を分けることができます.

ADSLなどの場合,電話回線から来た信号をADSLモデムでイーサネットに変換し,そして,ブロードバンドルータで家庭内のネットワークに接続し,さらにハブを使ってケーブルを分岐するという形になります

ブロードバンドルータは,DHCPの仕組みをつかって,家庭内のコンピュータにIPアドレスを自動的に割り当ててくれる機能をもっていることが多いでしょう.

ADSLモデムとブロードバンドルータとハブは,そのうちのいくつかが同じ機械にまとまっていることもあります.