16.1.3 HTML

WWWにおいては,ウェブページの実体であるハイパーテキストを記述するのにHTML(HyperText Markup Language)およびCSS(Cascading Style Sheets)というものを用います.

HTMLの名前には「マークアップ言語」という言葉が入っていますが,マークアップ言語というのはテキストファイル中に文書と共に文書の構造を記述するための言語です.ウェブブラウザのメニューの中にある「ソースを表示」をクリックすると,HTMLで書かれたウェブページの正体を見ることができます.それをよく見ると,記号の列に混じってウェブページ中の文書が入っているのが分かると思います.HTMLでは文書に<と>で挟まれた「タグ」と呼ばれる記号を書き加えて,ただのテキストに意味付けを行います.この記法については,related_s16.3 HTML文書の書き方で詳しく学びます.

HTMLの実体はテキストファイルですから,書き方さえ分かってしまえば手軽に,しかも市販のソフトウェアなどに頼ることなく無料で文書を作ることができます.WWWがここまで広まった要因の一つに,こうした事情があるのです.

先ほど軽く触れましたが,HTMLで記述するのは文書の「構造」です.構造というのは例えばタイトル,見出し,段落,リンク,引用,etc.のことを指します.ですから「構造」ではない視覚的要素,たとえばテキストの色や大きさはHTMLで指定すべきものには含まれません.昔の名残りで今でもHTMLを使って視覚的要素を指定することは一応可能ですが,仕様書にははっきりと「非推奨」と書かれています.

これはなぜかというと,ウェブページを閲覧するコンピュータの環境が多種多様だからです.たとえば世の中には,ターミナルウィンドウ内で動くようなブラウザが存在します.そういうブラウザに対しては,視覚的要素の指定があまり意味を成さないでしょう.また,視覚障害者用の音声読み上げブラウザというのもあります.これらの視覚的表現力を持たないブラウザにとっては,視覚的情報は無用の長物でしかありません.

そこでウェブページの視覚的文書をHTML本体と切り離して記述するために,現在はCSS(Cascading Style Sheet)というものが用いられるようになりました.詳細は後の章に譲りますが,CSSというのはHTML文書の視覚的要素を指定するための仕様です.CSSもHTMLと同じく,テキストファイルで記述できます.CSSにデザインを任せるようになって,ウェブページのデザインの自由度は格段に上がりました.

しかし残念ながらCSSの利用は,まだ徹底されていません.のみならず,巷には文法的に正しくないHTML文書や誤ったHTMLの解説もありふれています.これからウェブページの作り方を学ぼうとする皆さんはそういう間違えた情報に流されず,ぜひ正しい方法を身につけてください.それがウェブページを作る人にとっても見る人にとっても,最善のことなのですから.