21.6 著作権や肖像権

著作権は著作権法で規定され, また肖像権は幸福追求権 (憲法第13条) から導かれます. これらを侵すことは許されませんが, これもネットワークやデジタル機器の普及によって侵される危険性が高まってきたという現実があります.

著作権

著作物

著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したもの」ですが, 具体的には音楽や小説,映画,プログラムその他が含まれます. なお,単なるデータは著作物ではありませんので統計データなどは著作物になりませんが, そのデータを創作的に構成したデータベースなどは著作物となります. ある著作物を元に作った著作物に関しては,元の著作物の二次的著作物と呼ばれます.

何が著作物で何が著作物でないのかに関しては,判断が分かれる部分もありますが, 例えば次のようなものは著作物ではありません.

上記に挙げたようなものでも, それを自分なりに創作的に表現することを行なっていれば,それは著作物になります. しかし,単にがんばってデータを集めたということをもって著作権法で保護されることはありません. これを「額に汗の法理」と呼びます. 創作性は必ず必要となるのであって, だれがやっても同様の結果になるようなものならば, 額に汗したとしても著作権法はそれを評価しないのです.

著作権者の権利

著作物,あるいは二次的著作物に関しては著作者が大きな権利をもちます. 例えば複製権であるとか公表権,公衆送信権などといったものがあります. もっとも,著作権法は著作権者の保護のみでなく, 文化の発展を目的としています.そういった意味である程度の制限を受けます. なお,著作権は日本では一部を除き著作者の死後50年で消滅します.

他の知的財産権

また,著作権と産業財産権 (意匠権,商標権,実用新案権,特許権) をあわせて,知的財産権と呼びます. 上記では著作権の話をしましたが,他の権利も無視してはいけません.

肖像権

肖像権と呼ばれるものは, 明文として法律で規定されているわけではありません. これはプライバシーの権利の一つでもありますが, 特に有名タレントなどに関しては財産権としての権利も存在します.

いずれにせよ,相当の理由がない限りは, 本人の承諾なしにその人の写真などを公表することは許されません. 肖像権の消滅がいつであるのかははっきりしません.

音楽CD/映画DVDのコピー

音楽CDに関しては, CD-R やハードディスクなどにコピーすることが容易になってきました. これは家族,あるいはそれに準ずる人の間で用いるならば問題ありませんが, 見知らぬ人などに与えるなどすれば複製権の侵害となります.

また,音楽CDの中でもコピープロテクトがなされたコピーコントロールCDがありますが, そういったものに関して,プロテクトを意識して破ってコピーを行なう場合は, これも複製権の侵害といえます.

なお,映画が収録された DVD-Video に関しては, 該当機器以外では再生させない為の暗号化 (CSS) がなされています. コピーコントロールの仕組みである CGMS を解除してコピーすることは著作権法に違反し, また CSS による暗号化を解除するためのソフトウェアを提供することは不正競争防止法に関して違法といえます.

教育用計算機システムを利用する場合には, 例えば音楽ファイルなどを, 著作権者の許可なく他の人が読めるところにおいてはいけません.

ソフトウェアのコピー

ソフトウェアに関しても同様に, 著作権者の許可なくバックアップ目的以外でコピーを行なうことはできません. ソフトウェアに関しては,著作権法も重要ですが, 利用許諾が非常に重要となります. どこまでの行為を著作権者が許可しているのかに関して, 利用許諾できちんと確認せねばなりません.

一般的には商用ソフトに関しては, コピーして他人に配るような行為は禁止されているでしょうが, ソフトウェアの中には, 再配布や改変が可能なものがあります.

また,フリーソフトウェアやオープンソースと呼ばれるソフトウェアは,プログラムのソースコードが公開されており, 自由に利用できる種類のものです. 例えば Linux であるとか, FreeBSD,あるいは XFree86, Apache などがこれにあたります.

フリーソフトウェアのうちの少なくない部分は, GPL と呼ばれるライセンス (利用許諾) を採用しています. オープンソースや GPL に関してはニュースでの話題にものぼっていますので,知っておくとよいかもしれません.

ウェブでの著作物公開

著作物には公衆送信権が存在します. これは放送やウェブへの設置などに関しての権利です. 従って,著作権者の許可なく著作物をウェブページなどでそのまま利用することはできません.

ただし,他人の作品を転載することはできませんが,引用することは可能です. 引用とは,その出所を明らかにし, 自分の批評その他の目的の上で正当な範囲内で著作物を利用することです. これに関しては著作権法第32条で認められており, 著作権者の許可なく行なうことが可能です. 従って「無断引用禁止」の旨が示されていても, 原則として勝手に行なうことが可能です. ただし,引用された相手がどう感じるかには留意するとよいかもしれません.

また,自分の作品をウェブ上で公開するのは自由ですが, 世の中には様々な人がいますから, 自分の作品を無断でそのまま利用する人が出てくる可能性もあります. もちろん,正当な抗議を行なうことはできますが, 実際にリスクを負うことを覚悟した方がよいかもしれません. また,自分の撮った写真などに人気キャラクターなどが大きく写り, 商標権その他の問題になる可能性はあります.

なお,参考までに著作権者に無断で公開されている画像や音楽その他に関しては (プログラムを除く),ダウンロードして私的に利用することは著作権法上で禁止されていませんが,これはモラルの問題といえるでしょう.

無断リンク

ウェブページというのはハイパーリンクによって成り立ちますが, このリンクを行なうことについて, リンクされる側の許可が必要なのかどうかというのが問題になることがあります.

結論からいえば一般的なリンクに関しては法律的には問題になることはありませ ん. ですので,「無断リンク禁止」と書いてあったところで, 勝手にリンクしても法律問題になることはあり得ません. ただし,リンクされた相手がどう感じるかには留意するとよいかもしれません.

ファイル交換

不特定多数の人たちの間で様々なファイルを共有して交換するシステムが存在します. このファイル交換システムは世界的に流行しており,広く利用されています. このようなシステムは,うまく使えば非常に有用なのかもしれませんが, 悲しいことに現在は, 著作権者に断りなく映画や音楽などのファイルが交換されています. 無断での交換は公衆送信権を侵害するために違法となります.

関連する法律や規則