文字修飾とフォント

17.6. 文字修飾とフォント

LaTeX では文書構造を論理的に指定するコマンドや環境( 17.7. さまざまな環境 参照)のみを使って文書を書くのが望ましいです。しかし、完全にそれだけというわけにはいかないでしょう。本節では、フォントや文字の大きさを変える方法について説明します。

LaTeX の標準書体 #

LaTeX では、標準では次の出力例に挙げる欧文 7 フォント(3 ファミリ)・和文 2 書体を主に使います。これらのコマンドは引数として後に続けて書いた { … } の範囲のフォントを変更します。

この標準で使われている欧文書体は Computer Modern と総称されているもので、TeX の作者である Knuth 氏が作成されたものです。特徴として、文字サイズによって字形が微妙に異なることがあります。下の「文字サイズ」の図で、\tiny の出力結果と \Huge の出力結果を比べてみて下さい。

ここに挙げた Computer Modern 以外の欧文・数式フォントを用いたりすることも可能ですが、ワープロソフトのように「OS で使えるフォントをそのまま利用できる」わけではありません。詳しく説明するのは、TeX/LaTeX におけるフォントの取り扱いについて述べる必要があるのでここでは行いません。専門書を参照して下さい。

文字サイズ #

文字サイズを設定するには、以下のコマンド達を使います。これらのコマンドは、「指定した箇所から有効」というコマンドであるので、一部分だけ適用したいような場合は

右は{\small 少し小さな\textgt{ゴシック体}}、でしたが、今は違います。

のように、{ … }で適用範囲を囲みます。 17.7. さまざまな環境  で扱う「環境」の中にこのような文字サイズ変更のコマンドをおいても、環境の外には影響を及ぼしません。

標準は \normalsize です。なお、この表に書かれている「大きさ」の欄の値は、クラスファイルで 10pt (標準)を指定した時のもので、11pt, 12pt を指定した場合は。異なる値になります。

「LaTeX で作った文書を見ると、ワープロソフトで打った文書に比べて(同じ 10 pt のはずなのに)和文文字が小さい」と思う方がいるかもしれません。それは、実際その通りになっているからです:

  • jsarticle, jsbook では、10 pt (= 3.514 mm) の欧文に対して 13 級 (= 3.25 mm) という大きさの和文をあわせるようになっています。具体的に言うと、和文は欧文の約 0.92487 倍になっています。
  • その他の和文用のクラスファイル、jarticle, jbook, tarticle などでは、和文は欧文の 0.962216 倍になっています。

強調 #

一般的な強調は、\emph コマンドを使います。\emph コマンドの中では、和文はゴシック体、欧文は Italic になります(欧文が Italic になるのは、それが一般的だからです)。\emph の中で \emph を用いると、明朝体・Roman のもとの状態に戻ります。

\verb|\emph|コマンドを使うことで、強調になります。\emph{強調(emphasis)のように、ゴシック体・Italicになります。この中で\emph{さらに強調(emphasis)すると}、明朝体・直立体に戻ります。}

代表的な書体変更パッケージ #

ここでは、本文用の書体と数式用の書体を同時に変えるような、いくつかの有名なパッケージの例を挙げます。本文用の書体だけを変える方法については、専門書を参照して下さい。

各パッケージのサンプルは、次の TeX ソースを使って出力しています。

\documentclass[b5paper]{article}
\usepackage{ ... } % ←ここを変える
\begin{document}
\begin{itemize}
\item ABCDEFGHIJKLMnopqrstuvwxyz 0123456789
\item \textsf{ABCDEFGHIJKLMnopqrstuvwxyz 0123456789}
\item \texttt{ABCDEFGHIJKLMnopqrstuvwxyz 0123456789}
\end{itemize}
\[
 \oint\_{\Gamma} f(z)\,dz = 2\pi i \sum\_{j=1}^n \mathop{\mathrm{Res}}\_{z=z\_j} f(z).
\]
\end{document}

Computer Modern 系列:lmodern パッケージ #

lmodern パッケージでは、標準書体の Computer Modern から派生・強化した Latin Modern というフォントを使います。教育用計算機システムの Mac 環境では、

\usepackage[T1]{fontenc}

を一緒に指定しないと正常に動作しないようです。

Times 系列:mathptmx, txfonts パッケージ #

mathptmx パッケージは、標準の Roman 体に Times を、またギリシャ文字や一部の数式の記号に Symbol フォントを設定します。

また、txfonts パッケージは、他の数式記号なども置き換えます。Sans serif 体も Helvetica になります。

Palatino 系列:mathpazo, pxfonts パッケージ #

mathptmx, txfonts の Times(系の)フォントを、Palatino に置き換えたものが mathpazo, pxfonts です。まず mathpazo パッケージの出力例です。

次に、pxfonts パッケージの出力例です。

otf パッケージ #

最後に紹介するのは、OpenType フォント(Mac 環境の「ヒラギノ明朝体ProN W3」など)を扱うための otf パッケージ( Open Type Font用VF、齋藤修三郎氏)です。JIS 基本漢字の範囲外にある文字を使う時や、太い明朝体などを扱いたい時に便利です。

otf パッケージを読み込むと、\UTF{…}, \CID{…} の 2 命令が使えるようになります。\UTF{16進4桁} には出力したい文字の Unicodeでの位置を 16 進数 4 桁で指定します。

また、OpenType フォント中の文字を直接 CID という番号を通じて指定することもでき、その場合は \CID{10進数} を使いますが、こちらの説明は省略します。

\UTF{9DD7}外と内田百\UTF{9592}とが\UTF{9AD9}島屋に行くところを想像した。
\CID{7652}飾区の\CID{13706}野屋と、\CID{1481}城市の\CID{13706}野屋

さらに otf パッケージを読み込むときに deluxe オプションをつけると、標準では和文が明朝・ゴシックの 2 書体だけだったのが、細明朝、太明朝。細ゴシック、太ゴシック、丸ゴシックの計 5 書体に増えます。

\documentclass{jsarticle}
\usepackage[deluxe]{otf}
\begin{document}
\textmc{細明朝体}、\textmc{\textbf{太明朝体}}、
\textgt{細ゴシック体}、\textgt{\textbf{太ゴシック体}}、
\textmg{丸ゴシック体}
\end{document}

otf パッケージは和文フォントを変えるパッケージで、欧文や数式部分のフォントは基本的には変えません。

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