グラフの描き方 (4): 点グラフと折れ線グラフ

23.5.5. グラフの描き方 (4): 点グラフと折れ線グラフ

平面上に点を打つタイプのグラフを考えましょう。これらのグラフには、大まかに

  • 点グラフ
  • 折れ線グラフ
  • 散布図

といった種類があります。状況に応じて、どれを選ぶのかが変わってきます。

このうち散布図だけは、他の 2 つと比べると用いられる状況が違います。というのも、点グラフや折れ線グラフでは「1 つの項目に 1 つの数値が対応する」という状況を考えるのに対し、散布図では「1 つの項目に 2 系列の数値データが対応していて、その 2 つの系列間の関係を見る」のが目的です。そこで散布図は後回しにし、この節では、点グラフと折れ線グラフの扱いを考えます。

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適合するデータの尺度 #

点グラフにせよ折れ線グラフにせよ、「軸方向に測った 2 点間の距離」がデータを表します。よって点グラフで表せるデータは、間隔尺度以上です。たとえば温度を表すのには適していますが、順位を表すのにはふさわしくありません。また比例尺度は間隔尺度の上位にありますから、比例尺度のデータにもこのグラフは適用できます。棒グラフだと「基準点が常に 0」という制約があるので、値の変化を比較したい場合などは点グラフに切り替えると良いでしょう。

データの項目名はどんな尺度でも構いません。ただし項目名の側にくる尺度に応じて、折れ線を引くかどうかが変わってきます。

グラフの種類の選択 #

続いて、グラフの詳細なオプションを検討しましょう。

折れ線あるいは近似曲線の有無 #

点同士を折れ線で結ぶかどうか、あるいは近似曲線を描き入れるかどうかは、項目軸の尺度に依存します。

隣接する項目の間に線を引いて折れ線グラフにする場合は、項目軸の側も間隔尺度以上でないといけません。というのも、折れ線にすると「線の勾配」という図形的な量が登場してきます。線の勾配は縦方向の変化量を横方向の変化量で割ったものですから、この勾配が意味を持つには、横軸の側でも「変化量」が意味を持たないといけません。

折れ線ではなく近似曲線を引く場合も同様です。プロット点を近似する曲線を引くと「プロットした点の間における値」が登場します。ここで「点の間」を考えるには、やはり横軸側が間隔尺度でないといけません。

軸の縦横 #

原理的にはグラフの縦横をひっくり返しても同じ情報を記すことが可能です。ただ折れ線グラフの場合はまず間違いなく、折れ線が左から右に引けるようグラフを描きます。同様に近似曲線を描き入れる場合も、近似直線が y = f(x) の形の式で表せるように軸の縦横を決めます。この事実については「慣習」以上の理由がないように思われますが、わざと慣習に従わない描き方をすると、多くの人は強烈な違和感を感じることでしょう。

項目の並べ順 #

項目名が順序尺度以上であれば、その順序に従って項目を並べるのが普通です。特に折れ線や近似曲線を描き入れる場合は「ある点から次の点まで、どれくらい変化するか」の情報がグラフ中に登場します。ですから「次」を乱すような並べ方をしては、グラフの意味がなくなってしまいます。また棒グラフでは「どっちの向きを大きい方向にするか」が時と場合によって変わりますが、折れ線グラフではまず左から右を大きくなる方向に取ります。

横軸が名義尺度の時は、棒グラフのときと同様、値の順位を見せたいかどうかで並べ方が変わります。順位を見せるグラフなら値の大きい / 小さい順に、そうでないなら値の大小順が揃わないような並べ方をしましょう。 23.5.2. グラフの描き方 (1): 棒グラフとヒストグラム を参考にしてください。

グラフの体裁 #

ここまでの情報を決めたら、最後に体裁を整えます。

目盛り幅の調整 #

間隔尺度に対して、原点の位置の調整と目盛り幅の調整の両方を行えます。グラフを載せる紙面のサイズ等を検討した上で、見やすいようにしましょう。ただしデータを広げすぎたり、潰しすぎたりしないよう気を付けてください。

特に近似直線を引く場合「当てはまり感」のコントロールは重要です。言うまでもないことですが、近似直線の当てはまりの良し悪しはグラフとは無関係に、データのみから決まることです。グラフを用いて、当てはまり方に対する印象を操作してはいけません。データから当てはまりが良いと判断される場合は目盛りを狭めに、悪いと判断される場合は広めに取りましょう。

値の表示 #

値の表示法は、棒グラフのときとほとんど同じです。

各項目の値: それぞれの項目の値を数値でも示したい場合、プロット点のすぐ近くに書き込みます。ただし項目数が多い場合や複数の系列がある場合は、全ての数字を記入するとごちゃごちゃしてしまいます。

軸と目盛り: 横軸と縦軸が共に間隔尺度以上である場合は、通常は軸をつけます。目盛りの数値は等間隔に、かつ細かすぎでも粗すぎでもないようにします。値の範囲が広い場合は補助目盛を使うと効果的です。

目盛り線: 目盛り線は細めに描きましょう。太くすると、目盛り線のどこが目盛りの数値に対応するのか不明瞭になってしまいます。目盛り線を軸に対してどっち向きに張り出させるかについては、特にルールは無いようです。

値を示す線: 平均値や閾値などの「データにとって特別な値」を示したい場合は、その値を指し示す線を項目軸と平行に描き入れ、点を描く領域を横断させましょう。棒が値を越えたかどうか、一目で分かるようになります。逆に、データにとって重要でない値を示す線は描き入れるべきでありません。

項目名や軸ラベル #

項目名: 項目名が間隔尺度未満の場合は、項目名を表す軸の脇に、各項目の名前を書きます。

軸ラベル: それぞれの軸に対して中心揃えになるように、軸のラベルを描きましょう。

プロット点と折れ線の見た目 #

点グラフや折れ線グラフでは、1 つのグラフの中にいくつものデータ系列を書き込むことができます。複数の系列が登場するときは、グラフの目的に応じて体裁を調整しましょう。

プロット点の形と模様: プロット点に対してコントロールできる要素は形、大きさと色の 3 つです。プロット点は小さいよりは大きい方が、塗り面積が小さいよりは大きい方が目立ちます。これらの点を考慮しながら、特定の系列だけを目立たせたり、あるいは並列に扱われるべき系列の目立ち方が均一になるように調整しましょう。また色をプロット点の識別に使う場合には、点の色と形を同時に変化させる方が良いでしょう。人によっては、特定の色の識別が困難なことがあります。

折れ線のスタイル: 折れ線については、線種 (実線、点線、一点鎖線など) と色を指定できます。色についてはプロット点と合わせましょう。また特定の系列だけを目立たせるなら、その系列の線を他のものより太く書きましょう。逆に同じ程度に目立たせるべき線が複数本ある場合は、線の太さと線種をコントロールし、どれか 1 つが目立ち過ぎないようにしましょう。

近似曲線のスタイル: 近似曲線の場合も、設定できるスタイルは折れ線と同じです。ただし近似曲線の場合、プロット点と比較しての目立ち方が「当てはまり感」に影響を与えます。近似曲線が目立つときは当てはまりの良さが感じられる一方、点の方が目立つとデータのばらつきが感じられます。データだけから当てはまり方が良いと言えるなら近似曲線を、そうでないならプロット点の方を相対的に目立たせましょう。

その他 #

余分な装飾の除去: プロット点や折れ線に対して、影などの装飾は基本的に無用です。よほどの理由がない限り取りましょう。データを表すのに関係のない要素をグラフ中に残す理由はありません。

枠: 分野によっては、グラフに枠をつけることが好まれることがあります。

グラフの描き方 (3): 円グラフ グラフの描き方 (4): 点グラフと折れ線グラフ グラフの描き方 (5): 散布図