23.5.3. グラフの描き方 (2): 棒を用いたグラフの合成
棒を使ったグラフは、上手く組み合わせると複雑な情報を表示できます。たとえば、何種類かの棒グラフを
- 積み重ねる
- 同じ向きに並べる
- 反対向きに並べる
といった操作によって、データの比較をしたり、あるいは内訳を見たりすることができます。こうした手法を学びましょう。
なお以下の説明では、棒グラフの基本的な特性を知っていること前提とします。 23.5.2. グラフの描き方 (1): 棒グラフとヒストグラム を読んでいない人は、先に読んでください。
棒の積み重ね #
棒グラフを積み重ねると、データの「内訳」を見ることができます。
たとえば、日本国内における 1 次エネルギー供給量の変化をグラフにしたのが次の図です。データは、経済産業省 資源エネルギー庁の発行する
エネルギー白書 2014 第 2 部の第 1 章第 1 節のものを使いました。
この図から分かるように、積み上げ棒グラフでは、全体の量とその内訳とを同時に表示できます。さらに、次の 2 点に注意してください。
特定の 1 つの項目の量: 軸にぴったりとくっついた項目だけは、常に棒の始まる位置が揃っています。全体の量と同時に特定の 1 項目の量を比較したいときは、その項目を表す棒が軸の位置から始まるようにしましょう。
隣り合う 2 本の棒における、各項目の増減: 隣接する棒の間に各項目の境界を結ぶ線 (区分線) を引くと、区分線の幅が広がってるか狭まっているかを見ることで、その項目の値が増えたかどうかが分かります。
また積み上げ棒グラフは、割合の表示にも便利です。いまの積み上げ棒グラフに現れるそれぞれの棒を、同じ高さになるように伸び縮みさせると、割合を表す棒グラフになります。
割合を表すときでも、「特定の 1 つ項目の量」あるいは「隣り合う 2 本の棒における、各項目の増減」がはっきり見えます。ですから割合の比較を行うときは、特別な事情がない限り円グラフ ( 23.5.4. グラフの描き方 (3): 円グラフ ) ではなく積み上げ棒グラフを使うべきです。
反対方向での比較 #
データの系列 2 個しかない場合は、2 つの棒グラフを逆向きに並べることによって、データの傾向を比較することができます。特に棒を逆向きにする方法では、2 つの項目の間で棒の位置の干渉が起きないため、ヒストグラム同士の比較ができます。
最も典型的な例は「人口ピラミッド」と呼ばれるものです。これは、それぞれの年齢毎に男性人口、女性人口を表す横棒を、左右反対向きになるよう並べたものです。試しに 1 つ描いてみましょう。総務省が
2014 年 10 月 1 日時点における人口推計 のデータを公表しているので、これを用います。45 歳から 54 歳までを取り出したピラミッドグラフが次の図です。
このようにピラミッドグラフにすることで、男女とも 48 歳 (1966 年生まれ) の人口が下がっていることを見て取れます。ちなみにこの穴は「ひのえうま」の迷信によるものです。
棒の並列 #
棒グラフを同じ向きに並べても、いくつかの系列のデータを同時に比較できます。
たとえば上で紹介した人口ピラミッドの一部だけを切り取り、棒を伸ばす方向を反対側ではなく、同じ向きにしてみましょう。90 歳から 99 歳までの人口を性別で比較すると、次のようなグラフが得られます。
90 歳以上では、人口の大半を女性が占めることが分かります。ピラミッドグラフを見ていても「女性の方が長生き」という傾向はある程度分かりますが、男女の人口にどの程度差がつくかを細かく見るには、棒を並列する形式の方が適しています。
棒を並列する場合は、同じ項目内での棒の間隔を、異なる項目間での棒の間隔より短く取りましょう。また棒を並列する方法では、データ系列が 3 つ以上であっても同時に比較できます。とはいっても、多すぎる棒を並べてしまうのは考え物です。ほどほどの本数に留めましょう。
合成方法の使い分け方 #
棒グラフの合成では、合成の仕方によって伝わるメッセージが変わってきます。
先ほどの人口ピラミッドを例に、考えてみましょう。棒を左右に並べるピラミッドグラフ形式と棒を並列させる形式は既に紹介しました。そこで積み上げ棒グラフの形にも加工してみます。
積み上げ棒グラフにすると「男女合計の年齢別人口」が分かります。そのためピラミッドグラフだけでは微妙に分かり辛い「41 歳のところに人口の山がある」という事実が、積み上げ棒グラフの側でははっきり見て取れます。
こうした棒グラフの組合せ方を比べると、同じデータを用いていても、読み取れる内容が違うと分かります。より具体的に書くと
- 棒を反対向きに並べる形式では、男女それぞれの人口を表したヒストグラムを同時に眺めることができます。
- 棒を同じ向きに並べる形式では、それぞれの年齢における男性と女性の人口差を見て取ることができます。
- 棒を積み重ねる形式では、片方の性別の人口と男女合わせた人口とを同時に読み取れます。
このように棒グラフを組み合わせるときは、読み取りたいデータの内容に応じて、適切な組み合わせ方を考える必要があるのです。上手く使い分けてください。