18.2.1. 著作権とライセンス
コンピュータやインターネットを扱う上で真っ先に問題になるのが著作権です。著作権法の内容とそれを巡る動きについて、考えてみましょう。
著作権 #
著作権は著作権法によって定められている権利です。著作権の指す具体的な内容は
著作権法 の第二章、特に第三節の第二款と第三款に書かれていますが、いきなり片っ端から取り上げるより、まずは「何をやったら著作権侵害になるか」を考えた方が分かりやすいでしょう。たとえば次に挙げる行為が著作権侵害に当たります。
- 他人が書いた文章に自分の署名をつけ、あたかも自分が書いたかのように見せかけること。
- 購入した映画の DVD を著作者に無断でコピーし、コピーしたものを知人に渡すこと。
- 小説の文章をキーボードで打ち込んでテキストファイル化し、そのデータを著作者に無断で、インターネット上の誰にでも見られる場所に置くこと。
要するに著作権法は「誰かが頑張って作ったものを勝手に使ってはいけません」と言っているわけです。当たり前と言えば当たり前ですね。東京大学の
情報倫理ガイドライン でも、著作権を遵守することが義務付けられています。
なお、他人の著作物を引用することは著作権法で認められています。著作権法第32条によれば「公表された著作物は、引用して利用することができ…その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ…引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とされています。引用の際は少なくとも出典を明記した上で、必要最小限度に留めるようにしましょう。
これらの例を踏まえて、もう少し細かく法律を読みましょう。著作権とは「著作権法で規定される種々の権利」の総称です。著作権法では第二条第一号において「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物と定義しており、著作物の作者(著作者)に対して以下のような権利を認めています。
- 公表権
- 氏名表示権
- 複製権
- 公衆送信権等
情報技術の発達と著作権侵害 #
さて、情報技術の発達は著作権侵害を簡単にできるようにしてしまいました。上に著作権侵害の例を挙げましたが、みなさんは著作権侵害をしようと思えばいつでも出来るはずです。その最大の理由は、コンピュータが情報をデジタル化して保存していることにあります。昔のカセットテープなどはダビングすると劣化するため、情報を完全に保ったままコピーすることはできませんでした。しかしデジタル化されたデータは 0, 1 の羅列に過ぎないので、元のデータと全く同じものをいとも簡単に複製できてしまうわけです。
そして、インターネットの発達は著作権者に対して更なる大打撃を与えました。インターネットが世界中にいる人をつないだがために、著作物のデータを著作権者に無断で、しかも大勢の人に送れるようになってしまったのです。実際 1990 年代終盤から 2000 年代半ばにかけて Napstar, WinMX, Winny をはじめとするファイル交換ソフトウェアによって音楽をはじめとするファイルが大量に、かつ不正に不特定多数にばらまかれました。各種の著作権団体が被害額の見積もりをしていますが、その額は実に巨大なものです。
現在でも著作権侵害の被害額は甚大で、有料で売られている音楽や動画のファイルがインターネットで配布されたり、プログラムの海賊版が出回ったりしています。また最近では、書籍をスキャナで読み取るいわゆる「自炊」と呼ばれる行為が問題になり、自炊によって本のデータもオンラインで不正に共有されるようになってしまいました。いたちごっこではありますが、警察や各種著作権団体は常にこうした不正行為に目を光らせています。