LaTeX で欧文の文章を書く場合,メールに打つようにそのままキーを打っていけばよいというわけではなく,細かいところまで注意する必要があります.本節では,その注意点を簡単にまとめておきます.詳しくは,欧文の TeX/LaTeX の専門書にあたるのがいいでしょう(例えば,27.12 参考文献 に挙げた The TeXbook).
引用符
コンピュータでは,下の入力例の左側のように「”」「’」を引用符の代わりに使うことがありますが,LaTeX では,これで正しい出力は得られません.正しくは右半分のように,左右で打つ記号を変えます.二重引用符と一重引用符を並べる場合は,「\,」というコマンドを打って僅かな空白を空けます:
"not correct", ``correct''. 'not correct', `correct'. He said, ``This is `cool'\,''.
ハイフンやダッシュ
また,ページ範囲や引き算はしばしば「28-93」のように書きますが,LaTeX では次の4種類の記号にわかれており,入力する際には区別が必要です.
co-operation, well-defined % hyphen pages~28--93, Cauchy--Schwarz inequality % en-dash It was successfully compiled, but--- %em-dash We have that $a-b=42$. % minus sign
空白のさらに細かな扱い
半角の「~」は,「改行を許可しない空白」を表します.空白の幅は,単語間の空白と同じです.複数の半角空白分をあけるのに使うこともできますが,主に改行されたくないところを指定するのに使います:
(~~~~~) Bartel~Leendert van~der~Waerden Robert~Anson Heinlein Arthur~C. Clarke Chapter~8 1,~2, or~3 from 1 to~42
また,LaTeX は文間空白と単語間空白を自動的に区別し,前者の空白の幅を広げます.下の出力例を細かいところまで観察して下さい.
I watch TV. But, % 単語間空白 I watch TV\@. But, % 文間空白 Proc. Amer. Math. Soc. % 文間空白 Proc.\ Amer.\ Math.\ Soc. % 単語間空白(改行許容) Mr. Anderson % 文間空白 Mr.~Anderson % 単語間空白(改行抑制)
上の例のように,LaTeX は,大文字の後のピリオド(や疑問符・感嘆符)は文の終わりとみなさず,その後のスペースを単語間空白とみなします.
\frenchspacing コマンド
なお, 単語間空白と文間空白を同じ幅で出力する,という流儀もあり,最近ではむしろこちらの方が多くなってきました.この流儀を採用するには \frenchspacing コマンドを使います.この場合は \@ を使う必要はなく,「その空白で改行を許可するのかしないのか」だけを気にすればよいことになります.
例として,\frenchspacing コマンドの有無でどのように変わるかを Computer Modern Roman と Times の例で示しておきます.例文は,プログラムとしての TeX のソースファイル tex.web(例えば CTAN にあります)中から引用しました.
欧文用 LaTeX
日本語が一切含まれない文書ならば,欧文用の,すなわちオリジナルの,LaTeX を使うというのも1つの手です.この場合,文書中に和文文字は一切入れてはならず,また和文用のクラスファイル (jarticle, jbook, jsarticle, jsbook, …) も使えません.オリジナルの LaTeX を使うには,platex コマンドの代わりに latex コマンドを使用します.
TeX ソースから pdf を直接作成する pdfTeX や pdfLaTeX というものも Hàn Thế Thành 氏により開発され,海外では一般的になっています(実は,latex というコマンドで起動するのは pdfLaTeX の DVI 出力モードです).残念ながら,pdfTeX/pdfLaTeX の日本語対応は正式にはされていません.さらに,XeTeX や LuaTeX といった次世代の TeX の拡張も開発がされており,それらの上で日本語を扱う試みも行われてはいますが,まだ安定してはいないようです.
同じ文書でも,欧文用 LaTeX と pLaTeX では完全に出力が同じにならないことがあります.例えば,脚注と位置指定に [b] をつけた figure, table 環境を同時に指定した場合,pLaTeX では脚注が下にきますが,欧文用 LaTeX の標準では逆になります.