LaTeX を用いた文書作成を実際に試してみましょう.
ソースファイルの作成
何らかのエディタを開き(例えば mi を使うならば 8.2 mi を参照),以下のように入力します.
\documentclass[b5paper]{jsarticle} \title{\LaTeX 文書の例} \author{999999 駒場 太郎} \begin{document} \maketitle これは\LaTeX による文書のサンプルです. \section{例} こんにちは,\LaTeX! ちょっとチェック. ちょ{}っとチェ{}ック. 段落が改まったので,数式でも書くか. \[ \int_0^{\infty} e^{-x^2}\,dx=\frac{\sqrt{\pi}}{2}. \] \section{まともな文} 以下は旧版の「はいぱーワークブック」からの引用です: \begin{quote} はいぱーワークブック(HWB)は,東京大学教養学部にある情報処理システムを 使いこなすための,うるとらはいぱーな入門用オンライン自習教材です. 自習環境としては,東京大学情報基盤センターの同大学教養学部駒場キャンパスに設置されている 教育用計算機システムを対象としています. \end{quote} \end{document}
作成にあたり,以下の点に注意して下さい.
- 全角文字と半角文字に気をつけて下さい.句読点の代わりに用いている「,」「.」は全角ですが,それ以外は半角文字です.また,大文字と小文字も間違えないように.
- 半角バックスラッシュが多用されています.Mac 環境で半角バックスラッシュを入力するには ¥ とします.Windows 環境などでは半角円記号 (¥) に見える場合があります.半角バックスラッシュがどうしても打てない環境では,代わりに半角円記号を利用して下さい.この問題については,18.4.1.3 Unicode を参照して下さい.
- 各行の最後では キーを押して改行して下さい.
できあがったら,これに “first.tex” と名前をつけて保存します.別の名前でも構いませんが,“.” 以降(拡張子)は “.tex” となるようにしてください.また,ファイル名に全角文字は使わないようにもしてください.
タイプセット
ターミナル(15.2 ターミナルの基本的な使い方を参照)を開き,first.tex を保存したディレクトリへ cd コマンドで移動します.そして,以下のように入力してください.
platex first.tex
エラーが起こらなければ,次のようなメッセージが出力されてタイプセットが終了します.
This is pTeX, Version 3.141592-p3.1.10 (utf8.euc) (Web2C 7.5.4)
(./first.tex
pLaTeX2e <2006/11/10>+0 (based on LaTeX2e <2003/12/01> patch level 0)
……中略……
(./first.aux) )
Output written on first.dvi (1 page, 2076 bytes).
Transcript written on first.log.
すると,first.tex と同じディレクトリに,タイプセットされてできた結果 first.dvi が存在しているはずです.また,同じディレクトリに first.log というタイプセットのログを記したファイルができています.
もし TeX ソースにミスがあった場合には,例えば次のように,エラーが表示され,キーの入力待ち状態になります.
! Undefined control sequence.
l.10 こんにちは,\LateX
!
?
このような場合,次の処理を選べます:
- ただ キーを押せば,このエラーを無視してとりあえず処理を続けることができますが,別のエラーに出会うことがあるかもしれません.その場合は,再度入力待ち状態になります.
- r キーの後に キーを押すと,以降はエラーを無視して処理が続きます.first.log に端末に出力されたエラーやその他のメッセージが出力されるので,後からそれを参照してください.
- x キーの後に キーを押すと,タイプセット処理を中断します.
その後,エラーメッセージをよく読み,その内容に沿ってソースを修正することになります.ちなみに上のエラーは,10 行目で「\LaTeX」というコマンドを「\LateX」と間違えてしまったことが原因です.エラーメッセージに関しては,LaTeX のエラーメッセージ (TeX Wiki 内)などを参照してください.
pdf ファイルの作成
dvi ファイルを表示したり,他形式に変換する時には,別のプログラムを使うこととなります.例えば,Windows では dviout というソフトウェアで,また多くの UNIX 系 OS では xdvi(または pxdvi) で,dvi ファイルを表示させることができます.
しかし,実際に印刷したり,他の人に結果を渡すような場合には,dvi ファイルを PDF ファイルに変換し,それを使って作業するのが便利です.ここではその方法を説明します.
first.dvi が無事に作成されていることを確認し,それが存在するディレクトリにおいて,以下を実行します:
dvipdfmx -p b5 first.dvi
ここで,-p b5 は紙のサイズが B5 判縦長であることを示すオプションです.さて,実行すると,以下のようなメッセージが出て,PDF ファイル first.pdf が生成されます:
first.dvi -> first.pdf
[1]
11616 bytes written
こうして,ひとまず LaTeX を使って PDF を作ってみるところまでできました.次節以降では,TeX ソースの書き方を順に説明していきます.