グラフを的確に使いこなせるようになりましょう.
「グラフなんて適当に描けばいいじゃん」と思っていたら,それは大間違いです.たとえば次の図を見てください.
これは,全く同じデータを 2 通りの方法でグラフ化したものです.左側のグラフでは内側が系列 1, 右側のグラフでは左の棒が系列 1 を表しています.
A | B | C | |
---|---|---|---|
系列 1 | 38.2 | 25.8 | 36.0 |
系列 2 | 33.8 | 20.4 | 45.8 |
数値で見れば,真ん中の項目 B の値が系列 1 と 2 で違うことがはっきり分かります.ところがグラフにすると,どうでしょうか?左のグラフでは項目 B に差があることを読み取るのは非常に困難です.一方で右のグラフでは,2 段目が細くなっており,データに差があることがはっきりと認識できます.このように同じデータを使うにしても,グラフの描き方一つで分かりやすさには大きな差が出るのです.
また,次の文章を読んでみてください.これは中島利勝・塚本真也『知的な科学・技術文章の書き方』 (コロナ社) の第 4 章「図の作成法と作図力学」からの引用です.
「図はデータの結果が,ただ単に理解できればよいのだ」と,もし考えているのなら,傑出した論文の完成には程遠いと言わざるをえない.なぜなら,科学・技術文章中の図は,それ自身が文章以上に雄弁に物語り,さらに図の連携によって論文のストーリーを構成し,説得力のある合理的な最終結論に到達すべきであるからだ.こうした意味で,図によって科学・技術論文の死活が決定づけられるといっても過言ではない.
みなさんが書くグラフは科学・技術論文のものではないかもしれません.また,きちんとしたグラフを描くことより,ラフスケッチをすることがが目的かもしれません.しかしどんなグラフにも「抑えるべきポイント」はあり,これを理解しないとグラフ本来の力を引き出すことができません.「グラフの描き方」を,一度腰を据えて考えてみましょう.
グラフを作る流れ
他の色々な物事と同様,グラフを作る際も「大体の枠組みを決めて,その後で細部を調整する」のが基本です.具体的に書けば
- グラフの基になるデータの性質と,そこから導き出したいメッセ―ジを考える
- データの性質とメッセージの内容に応じて,適切なグラフを選択する
- メッセージの内容を正しく表現するよう,グラフの体裁を整える
という手順になるでしょう.そこで以下
- 数値データの分類と,それに応じた適切なグラフの形式
- 個別のグラフ形式における,体裁の調整法
を,順を追って説明していきます.
23.5.1 数値データの尺度
数値データにはどのようなものがあるか,その分類を理解しましょう.数値データの分類 […] (このページを読む)
23.5.2 グラフの描き方 (1): 棒グラフとヒストグラム
棒グラフやヒストグラムは,棒の長さあるいは面積を用いて数値データを表すグラフです […] (このページを読む)
23.5.3 グラフの描き方 (2): 棒を用いたグラフの合成
棒を使ったグラフは,上手く組み合わせると複雑な情報を表示できます. (このページを読む)
23.5.4 グラフの描き方 (3): 円グラフ
円グラフは,割合を表示するためのグラフです.円をいくつかの扇形に分割し,それぞれ […] (このページを読む)
23.5.5 グラフの描き方 (4): 点グラフと折れ線グラフ
平面上に点を打つタイプのグラフを考えましょう.これらのグラフには,大まかに 点グ […] (このページを読む)
23.5.6 グラフの描き方 (5): 散布図
この節では,散布図を扱います. 散布図とは,1 つの項目に 2 つの間隔尺度が紐 […] (このページを読む)